アトピー性皮膚炎とは、アレルギー体質の方の皮膚に、こすったり引っかいたりといった刺激が加わることで起きる、かゆみを伴う湿疹(赤くなる、細かいブツブツ)のことです。
症状は慢性的で、落ち着いたりひどくなったりを繰り返すことが多いです。
症状
アトピー性皮膚炎の症状は、乳児(1歳まで)で2ヵ月以上、それ以外の小児や成人では6ヵ月以上続くことで診断されます。
一般的には幼少期に発症し、成長するにしたがってだんだんと良くなっていく傾向がみられます。
主に体の下記の部分に左右対称にあらわれます。
- 目や口のまわり
- 口唇
- 耳たぶ
- 頬
- 額
- 手足の関節部分
原因
多くはアトピー性皮膚炎を起こす遺伝的な体質に、ハウスダストやダニ、食物アレルギーなどと言ったアレルギー物質がきっかけになって発症するとされています。
治療
アトピー性皮膚炎の治療薬には、塗り薬、飲み薬、そして症状のひどい場合には注射薬があります。
塗り薬
塗り薬の基本はステロイド外用薬です。
皮膚症状に応じて適切な強さのステロイドを十分量塗ります。
症状が落ち着いてくれば、外用をいきなり中断するのではなく1日おき、2日おき、と徐々に中止していくことが推奨されています。
ステロイド外用薬には、長期に外用すると皮膚を薄くしてしまうというデメリットがあります。
そのため、元々皮膚の薄い小児や、成人でも顔や首など皮膚の薄い部位では、ステロイド外用薬に代わってタクロリムスという外用薬が使われてきました。
タクロリムス軟膏は特に問題なく外用できる場合も多いですが、ピリピリとした刺激感やほてり感が生じる場合があり、その使用感のためにどうしても継続できないというケースもありました。
2020年、そのような副作用の少ない非ステロイド系の新薬が約20年ぶりに発売されました。
デルゴシチニブ軟膏というものになります。
こちらは非ステロイド系の外用薬でありながら、タクロリムス軟膏のような刺激感・ほてり感が少なく、効果も期待できるということで発売以来多くの方が使用し効果を実感しています。
また、2022年にはジファミラスト軟膏という非ステロイド系の外用薬も新たに発売され、外用薬の選択肢が増えました。
症状に応じて外用薬を選択し、また、ヘパリン類似物質や尿素系・ワセリン系の保湿剤を組み合わせることで、外用薬だけでも十分に良い皮膚の状態を保てることが多いです。
飲み薬
飲み薬にはかゆみ・アレルギー症状を抑える抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬、アトピー性皮膚炎の炎症に根本から作用するシクロスポリン、JAK阻害剤があります。
抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬は対症療法という側面が強いですが、シクロスポリン・JAK阻害剤は塗り薬の治療だけでは効果不十分な場合に、炎症の根本に作用することで症状の改善をはかります。
シクロスポリンは計12週までと投与期間が決められており、副作用として胃部不快感、嘔気、高血圧や腎機能障害などがあります。
JAK阻害剤は免疫系に作用することから、使用前に採血やレントゲンの検査を行い使用可能かどうか確認が必要になり、内服開始後も定期的に検査を行う必要があります。
副作用として腹痛、にきび、帯状疱疹などがあげられます。
また、JAK阻害剤は薬剤費も高額ですが、高額療養費制度を利用すれば少ない負担で続けられる方もいます。
アトピー性皮膚炎の新しいお薬「ミチーガ」について
ミチーガは、アトピー性皮膚炎のかゆみを誘発するサイトカインであるIL-31に着目したお薬です。
・ミチーガの対象患者さんについて
従来の治療では十分な効果が得られない成人及び13歳以上の小児アトピー性皮膚炎患者さんにご使用いただけます。投与対象となる患者さんは、かゆみや皮疹の重症度を確認する必要がありますのでまずはご相談下さい。
・ミチーガの投与方法と投与スケジュール
ネモリズマブとして1回60㎎を4週間の間隔で皮下投与します。室温保存が可能です。
※ミチーガの使用上の注意
臨床試験においては皮膚症状の悪化を理由に脱落した患者さんは多くありませんが、原則として、ミチーガ投与開始後も、外用療法(ステロイド薬やプロトピック軟膏、保湿剤)を併用しながら治療いただきます。